一生モノを日常に。新潟でつくられる鎚起銅器ブランド「清雅堂」

5月末に新潟に足を運び、「清雅堂」さんを訪問しました!

清雅堂さんの商品は、伝統技法の「鎚起(ついき)」という技術でつくれらる金属工芸品。日常生活の器から金属造形作品をつくっていらっしゃいます。

伝承される技術でつくられる歴史ある商品をY.YACHT STOREで取り扱いをさせていただくことが決まり、「実際に商品をみて、作り手のお話しを聞いてみたい!」と思い工房へ伺わせていただきました。

上越新幹線 燕三条駅より車で20分程。
弥彦山の麓に清雅堂さんの工房が現れます。

お話を聞かせてくれたのは西片浩さん。

浩さんの父、西片正さんが二代目。現在は兄の西片亮太さんが代表をつとめています。
商品は全て、鎚起職人である3人で製作されているんだそう。

鎚起とは、一枚の金属素材を様々な種類の鎚(つち)と当て金(あてがね)を使い、打ち延べ、打ち縮めて製品を作りあげる伝統技法。1つ1つの商品が時間をかけ、丁寧に作れられるのです。

「清雅堂」のはじまり

江戸時代、弥彦山近郊では良質な銅が採掘され、銅の精錬が隣街の燕市で行われていました。その頃、鎚起銅器の技術が宮城県仙台市の職人によって伝えられ、鍋や藥缶、煙管などの製造が始まったことが燕の伝統工芸「鎚起銅器」のはじまりとされています。

同じ新潟県のメーカーで「玉川堂」さんも鎚起銅器で有名ですね。

清雅堂さんの会社設立は30年前ですが、浩さんの祖父が50年前に工房を立ち上げました。

燕の鎚起銅器はお茶道具をつくることから発展してきました。現在は製造の6-7割ほどは酒器になっています。
ですが、中国・台湾では日常の中でお茶を大切にする文化があり、お茶道具が人気。中でも「湯沸かし」がとても高い評価をうけているそう。

唯一無二の技術でつくられる「湯沸かし」

鎚起の技術を駆使し、一枚の金属板から作り出される湯沸しの最高峰「耳口打出 湯沸かし」。この清雅堂の商品がとても高い評価を受けています。

一般的なやかんやケトルは、耳と口はパーツとして別々で作り、本体に溶接して作ります。しかし「耳口打出」は、一枚の金属板を金鎚で〈打ち絞り〉、立ち上げ部分の径を小さくしていく中で、「口」「耳」を残しながら成形し、本体を完成させるという希少な伝統技術でつくられます。
この1枚の板からつくる特殊な技術が、芸術的にも技術的にも評価されています。

この耳口打出湯沸かしをつくるのは兄の亮太さん。
耳口打出湯沸かし制作者の第一人者の(故)上野彬郎氏より技術を継承し、希少な技術と造形美から主に中国国内で高額で取引されています。年間で5-6個つくれれば良いほうだとか。

設計図なし。たたいてつくる職人技

実際に作業している工房を見させていただきました。
作業の様子は昔と変わりません。振動を吸収する畳に置かれているのは、くりぬいたけやきの木。この作業台の上で商品がつくられます。

壁には大小含め100-200種類程の金槌が並びます。
加工する用途で使い分けているそうです。

作業台のけやきの木に取り付けられている「当てがね」に銅板をあて、叩いて形を作っていきます。

形に合わせて浮かせたりなど、丁寧に丁寧に叩いていきます。銅を叩いていくと固くなるのでそのたびに火にかける「焼き戻し」をして柔らくし、また叩く。この作業を何回も繰り返すことで形が完成します。

形を作るときは強くたたくので表面がぼこぼこに。なので最後は鏡面の金槌でなめらかに仕上げます。
槌目と槌目のみねが色を出す一つの要素になるので、きれいに意識するように叩いていくそうです。

驚いたのが、商品には全て決まった型や設計図がないということ。
1つ1つの工程を経験と感覚から作り上げていく。まさに職人技です。

清雅堂オリジナルの発色表現「青藍色(せいらんしょく)」

清雅堂さんは創業当初から銅素材の発色・表現を追求しています。

今回は清雅堂さんを代表する色「青藍色(せいらんしょく)」の説明をしていただきました。

浩さんの祖父が考案された色で、3年ほど前に命名。
美しい青紫色はまるで宝石のようです。

色の付け方は、日本の伝統工芸品に使われる発色技法のひとつで、錆付けし煮色液という液につけて発色させています。塗るのではなく、銅の錆びで色を表現しているそうです。
煮色液は昔から試行錯誤してできた液で、伝承された分量でつくられます。
この煮色液は人により特徴があり、大根おろしを入れるなんて工房もあるそうです。

■着色方法

①硫化液(硫黄水)で黒く錆付け
②布にパウダー状の磨き粉をのせ艶が出るまで磨く
③煮色液を煮沸させ漬け込む
④水で急冷

 

 

 

清雅堂さんに着色する様子の動画をいただきました。
煮色液につけて数秒で色が変化しているのが分かります。

②の表面に残る錆びの量と、③の煮色液に漬け込む時間で色が変わるそうです。

形をつくる工程同様、つくり続けている職人だから出せる色。
この丁寧で繊細な作業があるから美しい色合いが生まれています。

Y.YACHT STORE 取り扱い商品

今回取り扱いが決まったのは「酒器」、「茶筒」、「急須」の3アイテム

■酒器

銅製の「ぐい呑み」、「徳利」、「ビアグラス」を取り扱います。
銅は熱伝導率が良い(ガラスの約400倍、ステンレスの約20倍)ので、冷却効果も抜群。
冷たいお酒を注げば瞬時に銅も冷え、冷たいお酒の温度をそのままに飲むことができます。
(中は錫でコーティングされています。)

実際に銅のグラスとガラスのグラスで飲み比べさせていただきました!

冷たいドリンクを入れてすぐにに違いが。銅のグラスには結露ができ、すでに冷たくなっているのが分かります。
飲んでみると、銅のグラス自体が冷たいので口につけたときの清涼感が気持ちよく、ガラスのグラスと飲み物の温度が変わらないのにより冷たく感じました。

冷酒やビールなど冷たいお酒は、キリっと冷やして楽しみたいもの。
これからの季節にもぴったりな商品です。

■茶筒

茶筒は製作工程が多く、作っている工房が少なくなっているんだそう。

清雅堂さんの茶筒の特徴は「リベット」が付いているところ。
槌目の模様をつけた板を巻いてつくっているので、くっつけるために銀はんだを流し込み鋲止めにしています。

外側は銅ですが、中側は銀メッキがかけられています。
また、茶筒は経年劣化が楽しめるよう、銅には酒器とは違う薄いコーティングがされています。

こちら浩さんが実際に使われている茶筒です。(左:未使用、右:長年使用したもの)

放置しているだけだとくすむだけ。さびの原因になる水分を残さず、たまに乾いた布で磨いてあげるとちょっとずつ艶が出てキレイになっていくそうです。

見せていただいた瞬間にスタッフ一同感動。つやのある素敵な色で、大切に扱われてきたことがひと目で分かりました。
(色の感じが写真ではなかなか伝わず、、、、)

※現在茶筒の取り扱いはございません。入荷次第お知らせします。

■急須

現在清雅堂さんでは、Y.YACHT STOREオリジナル商品を考えていただいています。

オリジナルを作っていただけるなんて感無量、、!
どんなものができのかと今から楽しみです、、、!

商品が出来上がった際には詳しくご紹介させていただきます!お楽しみに!

 

ご紹介した各商品については商品ページにて詳しく説明しています。

おわりに

カンカンカンと音をたてながら、1打ずつ丁寧に叩いて作られる清雅堂さんの商品はまさに芸術。
そして、そんな職人の手で完成されたものを次は自分の手で時間をかけ味わいを出していく。使えば使うほど愛着のわく一生ものです。

1つのものを大切に使い続けることって意外と簡単なことではないのですが、清雅堂さんの商品は大切にしたいと思い、日常にスッと溶け込んでくれるものばかり。毎日の生活に余裕と彩りを与えてくれますよ。

Writer Profile

ito

入社3年目。20代一人暮らし。
道具やお料理のこと勉強中です。
料理は苦手で自炊はたまにでしたが、&(COOK)スタッフに加わったことで積極的に挑戦中。
料理初心者の私がここで知った道具のことを伝えていきます。

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