【宮﨑製作所 おつゆ鍋】全面注ぎ口とぴったり閉まる蓋で作る。素材の旨味を引き出す「重ね煮」と「味噌汁」の片手鍋
一杯のお味噌汁が、心と体を整える
日本人のソウルフードとも言える「お味噌汁」。不思議なことに、毎日飲んでも決して飽きることがなく、一口すするだけでホッと心が落ち着きますよね。慌ただしい朝の時間帯でも、温かいお味噌汁が一杯あるだけで、一日を元気にスタートできるような安心感が生まれます。
そんな私たちの食生活に深く根付いている「汁物」を、もっと快適に、もっと美味しく作るために生まれた道具があります。それが、ものづくりの聖地・新潟県燕三条の老舗メーカー「宮﨑製作所」が手がける「おつゆ鍋」です。
「家庭料理が美味しくなる、長く使える道具」を半世紀以上にわたり実直に作り続けてきた作り手が、一切の妥協を許さずに完成させたこの片手鍋。そこには、私たちの毎日の食卓を思いやる、数々の「隠れた機能美」が詰め込まれておました。宮﨑製作所の宮﨑絢子さんに伺った開発秘話とともに、その深い魅力をご紹介します。

取材日:2026年6月某日
取材場所:株式会社宮﨑製作所 本社 (新潟県燕市)
取材者:ワイ・ヨット ストア 編集部
目次

どこからでも注げる、引き算の美しさを纏った片手鍋
「おつゆ鍋」は、毎日のスープやお味噌汁作りに特化した、スタイリッシュな片手鍋です。サイズは現代の暮らしのなかで最も扱いやすい16cmと18cmの2サイズ展開。
一見して驚くのは、その無駄を削ぎ落とした洗練された佇まいです。一般的な行平鍋などに見られる、くちばしのような「注ぎ口」の突起がどこにもありません。実はこちら、お鍋のフチのどこからでも、右利きでも左利きでも、液ダレすることなくスッと美しく器に注ぐことができる「全面注ぎ口」という特別な設計を採用しているのです。
たとえば具沢山のお味噌汁を作る際、大きな具材はおたまで器に装い、最後にこの全面注ぎ口からおつゆを優しく注ぎ入れる。そんな一連の所作を流れるように美しく引き立ててくれます。
本体は、内側から 「ステンレス・アルミニウム・ステンレス」の全面三層構造。優れた熱伝導でお湯が早く沸き、忙しい朝の調理を強力にサポートしてくれます。フッ素樹脂などのコーティングを一切施していないオールステンレス製で、長年愛用できる確かな品質を持った、キッチンに馴染む凛とした佇まいです。

理想の「片手ハンドル」を求めて費やした、執念の1年
「日本の家庭料理の基本である、ご飯、おかず、お味噌汁。この3つを最高に美味しく作れるシリーズを展開したいと考えました。お味噌汁といえば、やはりサッと手に取って使える『片手鍋』のイメージですよね」と宮﨑さんは振り返ります。
実はこのおつゆ鍋、開発当初はシリーズの他の鍋と同時期に発売される予定でした。しかし、実際のリリースはそこから1年も遅れることになります。その高い壁となったのが、「片手ハンドルのデザインと強度の両立」でした。
毎日ガシガシ使うものだからこそ、手にしっくりと馴染む持ちやすさと、長年使っても決して壊れない強靭さ必要不可欠です。それに加え、シリーズとして並べたときの統一感のある美しさも妥協できませんでした。
「両手ハンドルのおかず鍋との整合性を持たせるデザインに仕上げるのに、本当に試行錯誤しました」と語る宮﨑さん。持ち手の先端に開けられたフック用の穴ひとつとっても、ただの丸い穴ではなく、本体側の溝のカーブと完璧に合わせたアーチ状にデザインされています。機能と美しさを極限まで追求した結果、キッチンにずっと飾っておきたくなるような、洗練された「引き算のデザイン」が完成したのです。


「水切れの良さ」と「蓋の噛み合わせ」のジレンマを越えた、見えない職人技
おつゆ鍋のアイデンティティである「全面注ぎ口」。ここには、燕三条の職人たちの執念とも言える美学と、ミリ単位の緻密な検証が隠されています。
「注ぎやすさや水切れを良くするために、通常の鍋のように一部だけ注ぎ口を出っ張らせると、今度はフタがピタッと閉まらなくなってしまいます。お鍋の中の蒸気を逃がさないよう、蓋が隙間なくぴったりと乗る構造を保ちつつ、どこからでも綺麗に注げるようにしたかったんです」
この課題を解決するために採用されたのが、こだわりの素材選びと加工技術です。
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水切れを追求した「ステンレス素材」と「板厚1.6mm」
おかず鍋は内側がチタンで板厚2.0mmですが、おつゆ鍋はステンレス素材を採用し、板厚を1.6mmと少し薄く設計しています。これは、検証を重ねた結果、板厚が薄い方が「水切れが良い」ことが判明したためです。 -
汁ダレを防ぐフチの「ミラー(鏡面)仕上げ」
内側の全面は落ち着いた「つや消し(マット)仕上げ」になっていますが、注ぎ口となるフチの際の部分だけはあえてツルツルの「ミラー仕上げ」に磨き上げられています。ミラー仕上げによって表面張力が働き、液体を鍋に戻す効果が発揮されるため、液ダレを抑えて美しく注ぐことができます。
これぞまさに、使う人の小さなストレスを無くすための「見えない神業」。毎日お椀に汁を注ぐたびに、その気持ち良いほどの水切れの良さに感動を覚えるはずです。



食材の旨味と栄養を逃しにくい「重ね煮」の魅力とは?
全面注ぎ口でありながら、蓋が隙間なくぴったりと重なる特別な構造により、おつゆ鍋はごく少量の水分で食材を煮る「重ね煮(かさねに)」の調理で、その真価を最大限に発揮します。
食材が持つ本来の旨味や甘みを、水や調味料をほとんど使わずに引き出すヘルシーな調理法です。鍋の中に食材を「陰陽(いんよう)」の順に重ねて敷き詰め、蓋をして弱火でじっくり火を通します。
土の上に伸びる「陰」の食材(キャベツや小松菜などの葉菜類、キノコ類など)を下に、土の下に育つ「陽」の食材(大根やにんじん、じゃがいもなどの根菜類)を上に重ねることで、鍋の中で熱の対流が生まれ、調味料に頼らなくても野菜が持つ極上の出汁とコクが引き出されます。


「重ね煮のように、少ないお水で食材の栄養分や旨味を極限まで引き出したスープを作っていただきたい、というベースの思いがありました。そのためには、大切な蒸気が逃げてしまう構造(蒸気穴)ではダメだったんです」と宮﨑さん。
おつゆ鍋の蓋にはあえて蒸気穴を設けておらず、本体の上に蓋が隙間なくぴったりと乗る作りになっています。完全な無水調理ができるわけではありませんが、お鍋と蓋が高い精度で重なり合うおかげでごく少量の水での調理が可能となり、素材の栄養分や旨味をしっかりと中に閉じ込めることができます。
野菜の水分と少しのお水、そしてお味噌。たったこれだけで、食材本来の甘みや出汁がギュッと濃縮された、コクのある美味しいお味噌汁が完成します。「子どもがあまり野菜を食べないので、なるべく栄養が濃縮されたものを食べさせたいという親御さんの悩みにも寄り添えるお鍋にしたかったんです」という宮﨑さんの言葉からは、使い手の暮らしに寄り添う優しい眼差しが伝わってきます。
お味噌汁だけでなく、少量の水でブロッコリーを色鮮やかに茹でたり、ゆで卵を作ったりするのにも、このおつゆ鍋は大きすぎず小さすぎない最高のサイズ感です。


丸みのある鍋底とビス(リベット)のない内側。毎日のお手入れを快適に
毎日使う汁物用の鍋だからこそ、お手入れのしやすさは暮らしの質を左右します。おつゆ鍋は、内側にハンドルを留めるためのビス(リベット)が一切ありません。スポンジが引っかかることがなく、汚れが溜まる隙間がないため、サッと洗うだけでいつでもピカピカの清潔な状態を保てます。
さらに、鍋底の角に滑らかな「丸み」を持たせているのも大きな特徴です。角に汚れが残りにくく、スポンジでサッと丸みに沿って撫でるだけで汚れが落ちるため、日々のお手入れが格段にラクに行えます。
また、美しいステンレスを長年美しく使うための秘訣を、宮﨑さんはこう教えてくれました。
「汚れが蓄積するとそこから傷みやサビの原因になります。焦げ付いたり汚れたりしたときは、クレンザーを使ってしっかり磨き洗いしてください。それが、ステンレスを一番長持ちさせるお手入れなんです」
さらに、お鍋の多層構造の中にあるアルミニウムの層が表面に露出しない「安全設計」が施されているのもポイント。日本の強い食洗機用洗剤によってアルミ部分がえぐれて鋭利になってしまうのを防いでいるため、忙しい日には食洗機にも安心して頼ることができます(※10年、20年と長く使うためには手洗いが推奨されています)。
タフで美しく、お手入れも簡単。まさに毎日のキッチンワークの相棒として、これ以上ない安心感を与えてくれます。


コーティングフリーの安心と、丁寧な暮らしの真ん方に
「お鍋のコーティング剥がれを気にせず、長く安心して使い続けたい」……そんな思いを持つ方にこそ、このお鍋を手に取っていただきたい理由があります。
コーティングフリーのオールステンレスで作られたおつゆ鍋は、定期的な買い替えのループからあなたを解放し、長く安心して使い続けられる頼もしさがあります。
また、お出汁の香りや、お味噌の風味、素材の甘みといった「和食の繊細な美味しさ」を大切にしたい方。毎日のお味噌汁を、ただのルーティンから「最高のごちそう」へと格上げしたい方に、このお鍋は確かな違いをもたらしてくれます。
「本当に良いものを、手入れしながら長く大切に使いたい」。そんなあなたの丁寧な暮らしの真ん方に、ぜひ宮﨑製作所のおつゆ鍋を迎えてみませんか。

あわせて読みたい:宮﨑製作所 現地取材シリーズ
今回の「おつゆ鍋」のほかにも、宮﨑製作所が誇る職人技が詰まった名作のストーリーを公開中です。たった2分でお米に火が通り、ふっくら極上のごはんが炊き上がる「ごはん鍋」の秘密に迫ったインタビュー記事もぜひあわせてご覧ください。



bashi
17歳の黒猫と暮らし、最近はヘルシーな自炊を心がけています。
道具にはこだわりがあるものの、キッチンツールはまだまだ初心者。
新米スタッフならではの新鮮な視点で、皆さんと一緒に、お気に入りを見つけていければと思います。
