【現地取材】土鍋の「重い・面倒」にさようなら。大阪の老舗2社のタッグがつくる『槌目アルミ卓上鍋』ができるまで

【現地取材】土鍋の「重い・面倒」にさようなら。大阪の老舗2社のタッグがつくる『槌目アルミ卓上鍋』ができるまで

「軽くて扱いやすいけれど、どこか素朴すぎる」
「土鍋は雰囲気がいいけれど、重くて準備や後片付けが億劫……」

秋冬の食卓に欠かせない鍋料理。毎日の料理や家族で囲む食卓の時間を大切にしたいと思いつつも、そんな道具選びの悩みを抱えていませんか?

今回、使い手の暮らしに寄り添うワイ・ヨットのオリジナルブランド『にちにち道具』から登場したのが、そんな悩みを鮮やかに解決する『槌目(つちめ)アルミ卓上鍋』です。

手に取った瞬間に思わず「軽い!」と声が出る圧倒的な扱いやすさと、素早く火が通る抜群の熱伝導性。そして何より、現代のモダンなインテリアやテーブルコーディネートにすーっと溶け込む上品で洗練された佇まい。

この一見相反する「圧倒的な機能性」と「現代的な美しさ」を両立させた陰には、日本のものづくりを支えてきた大阪の老舗メーカー2社の代表と職人たちによる、並々ならぬ情熱と安全への執念がありました。

今回は、プレス・槌目加工を担う谷口金属工業株式会社と、表面処理・アルマイト加工を担う株式会社日興電化工業所を取材。工場見学と代表インタビューで明かされた、1個のお鍋に込められたストーリーをお届けします。

取材日:2026年9月某日
取材場所:谷口金属工業株式会社、株式会社日興電化工業所 (大阪府)
取材者:ワイ・ヨットストア 編集部

目次

メーカー・ゲスト紹介:ものづくりに人生を懸ける2人のトップランナー

今回の『槌目アルミ卓上鍋』は、大阪で長年ものづくりに向き合ってきた2つの老舗専門メーカーの卓越した技術と固い絆によって作られています。

(左)谷口金属工業㈱ 代表取締役 谷口敬氏、(右)㈱日興電化工業所 専務取締役 梁本裕士氏


谷口金属工業株式会社(プレス・槌目加工)

昭和25年(1950年)創業。大阪府藤井寺市に本社・工場を構え、75年以上にわたりアルミ製調理器具のプレス・加工を一筋に手掛けてきた老舗メーカー。自社で金型から手掛ける高度な職人技と、「血の通ったモノづくり」を信条に、強度の高い高品質なアルミ鍋を生み出しています。

株式会社日興電化工業所(表面処理・アルマイト加工)
昭和22年(1947年)創業。大阪市平野区に拠点を置く金属表面処理のプロフェッショナル集団。「アルミは生きている金属」と語る3代目代表をはじめ、独自の電解技術と環境・人体に優しい「ニッケルフリーな高圧蒸気封孔(ふうこう)技術」を追求しています。

「重い・面倒」を終わらせたい。現代の食卓に寄り添う挑戦のはじまり

なぜ開発したのか?(きっかけと想い)

「土鍋の雰囲気は好きだけれど、出すのも洗うのも重くて億劫」「一般的なアルミ卓上鍋は、軽くて便利だけど生活感が出すぎてしまう」── そんな悩みを聞きつけた「にちにち道具」の企画チームが目指したのは、そんな現代の暮らしのリアルな悩みに応える卓上鍋でした。

毎日気負わず使えて、手入れが楽で、なおかつ食卓に置いたときに『わあ、素敵』と思える品格があること。その理想を形にするため、アルミという素材のポテンシャルを最大限に引き出せる谷口金属工業と日興電化工業所とのタッグが組まれました。

アルミという素材が持つ「3つの圧倒的メリット」

谷口金属工業の代表 谷口敬氏(以下、谷口さん)は、アルミを採用する理由をこう語ります。

  1. 圧倒的に軽量であること(女性やシニアでも片手で軽々持てる)
  2. 熱伝導に優れていること(省エネでエコ、短時間で出汁が煮立つ)
  3. 加工後も安定した形状を保つこと(土鍋のように割れず、鉄のようにサビない)

このアルミの特性に「耐久性」と「現代的な美しさ」をプラスするため、高圧力の槌目加工と、2色の美しい表面加工(「シャンパンゴールド:本蓚酸アルマイト加工」と「シルバー:硫酸アルマイト加工」)が施されました。

叩き上げて、強く美しく。谷口金属が守り抜く「槌目」の魂と手仕事

工場に足を踏み入れると、ドスン、ドスンと重厚なマシン音が響き渡ります。谷口金属工業での工程は、まさにアルミという素材に「命と強さ」を吹き込む作業です。

模様だけではない!公的機関データで実証された「強度86%アップ」

谷口さんは「鍋の表面に見られるぽこぽことした美しい凹凸模様「槌目(つちめ)」。実はこれ、単なる飾りではありません。」と解説してくださいました。

『槌目加工は弊社創業以来の伝統技術です。元々アルミニウムは加工しやすい柔軟な金属ですが、高圧力で叩くことで金属の分子がギュッと締まり、飛躍的に硬くなる「加工硬化」が起きます。公的機関の強度試験でも、槌目加工をしたら約86%強度がアップするという結果が出ておりますので、丈夫で長持ちする製品を作ることができます』

実際に、槌目を打っていないアルミ板と打ったアルミ板を持ち比べて曲げてみると、その差は一目瞭然。打っていない板は手で簡単にぐにゃりと曲がりますが、槌目加工を施した板はビシッと硬く、びくともしません。37〜40トンもの圧力で何度も締め付けることで、熱による底の反りや変形を防ぐ頑丈さが生まれます。


槌目を打つ前と後。凹凸が素材を飛躍的に硬くする

1本1本ヤスリで削り出す、手作りの金型パンチ

側面の槌目を打つ機械には、18cmの鍋で約83回、24cmの鍋では93〜94回もの連続打撃が加えられます。その打撃を支える「金型パンチ(工具)」は、なんと職人が自らヤスリを使って手作業で削り出した特注品です。

『鍋のサイズや曲線によって全部形が違います。1つの型を完成させるのに2ヶ月近くかかることもあります。機械任せではなく、職人の目と手で微調整を重ねて型を作っているんです』

特注の金型パンチで行う槌目加工の様子

「口に触れても絶対に切れない」手作業のバリ取りと、妥協なき「磨き直し」

プレスや縁切りを終えたばかりの鍋のフチは、刃物のように鋭利です。谷口金属工業では、職人が手作りのヘラを使い、1個ずつ手作業でバリ(引っかかり)を取り除きます。熟練するまでに7〜8年かかるという手仕事です。

このバリ取りで使われる専用のヘラは、既製品ではなくすべて職人による手作りだといいます。
作る製品(雪平鍋やうどんすき鍋など)の形状に合わせて形を変えるだけでなく、作業する職人自身の持ち方や手の角度、使いやすさに合わせて一本一本細かく調整・作成されています。

高速で回転する鍋のフチにヘラを当て、外側から内側、そして再び外側へと絶妙な力加減で滑らせることで、手触りの良い滑らかな丸みを生み出します。
仕上げられたフチは「口で舐めても切れない」と言われるほどの究極の滑らかさと安全性を誇ります。

熟練の職人による手作業のバリ取り工程

職人が自身の「手の角度」や「持ち方」に合わせて自作・微調整した、バリ取り専用のヘラ

さらに、製造過程でわずかな擦り傷が見つかった場合は、そのまま次の工程に回すのではなく、工場内で職人がナイロン等を使って丁寧に「磨き直し」を行い、美しい状態に補正してからアルマイト工程へ引き渡すという妥協なき品質管理が行われています。



リボン型の会社ロゴに込められた「贈り物の心」

谷口金属工業の会社ロゴは、愛らしい「リボン」の形をしています。谷口さんにその由来を尋ねると、温かいエピソードを明かしてくれました。

『創業者の祖父が興した会社なんですけども、リボンというのは贈り物にしたり贈答品にしたりということで、「本当に良いものを、心を込めてお客様にお届けする」という気持ちが入っていると聞いております』

工程すべてをオートメーション化するのではなく、職人の手が何度も触れるからこそ宿る「血の通ったモノづくり」。
そこには使い手への優しさが満ち溢れていました。

創業からの想いを象徴するリボンマークが掲げられた社名看板
谷口金属工業(株)の職人の皆さま

託されたバトン。形づくられた鍋は、信頼するパートナーの元へ

谷口金属工業の工場で、高圧力のプレスや槌目打ち、手作業でのバリ取り、そして丁寧な磨き直しを経て、美しく頑丈な「形」が完成しました。

しかし、製品としてはこれでまだ半分です。ひとつひとつ大切に形作られた鍋本体は、傷がつかないよう慎重に梱包され、次なる工程を担う株式会社日興電化工業所へと運ばれます。

金属を丈夫で美しい形に造り上げる「成形」のプロフェッショナルから、金属の表面を保護し、洗練された色合いと安全性を授ける「表面処理」のプロフェッショナルへ。

同じ大阪で昭和20年から歩みをともにしてきた老舗2社が固くバトンをつなぐ「ものづくりリレー」によって、『槌目アルミ卓上鍋』はいよいよ仕上げの工程へと向かいます。

「家族の口に入るものを安全に」日興電化が誇るアルマイト加工の矜持

谷口金属工業から運ばれてきた鍋本体を受け取り、仕上げの表面処理を行うのが、金属表面処理のプロフェッショナル・日興電化工業所です。


「アルミは生きている金属」アルマイト加工の本質

『アルミは生きてる金属なんですよね。空気中の酸素と結合して自分を守ろうとする性質がある。僕らのアルマイト加工っていうのは、その表面を強制的に酸化させて薄い保護被膜を作ってあげることなんです』と、日興電化工業所の3代目代表 梁本裕士氏(以下、梁本さん)は語ります。

1923年(理化学研究所)生まれの歴史と「本蓚酸アルマイト加工」

今回の新商品で特に注目したいのが、シャンパンゴールドの優美な輝きを放つ「本蓚酸(ほんしゅうさん)アルマイト加工」です。

梁本さんによると、シュウ酸アルマイトの歴史は古く、1923年(大正12年)に理化学研究所で開発された「日本生まれのアルマイトの起源」なのだそう。昭和初期のやかんや食器が金色だったのはこのためです。その後、より安価に加工できる「硫酸アルマイト加工」が主流となり、現在大阪で本蓚酸処理ができるのは日興電化工業所を含めてわずか数社しかありません。

アルマイト加工の現場には、まるで「生け簀」のような巨大な槽が並びます。
専用の溶液に製品を浸し、電流を流すことで金属表面に強靭な保護被膜を形成しているとのこと。溶液の温度や電圧、時間を職人が厳密に見極めることで、美しい色合いと高い耐久性を引き出します。職人の手仕事と組み合わさり、極めて高品質な仕上がりを実現しています。

アルマイト加工をおこなう生け簀のような装置


『電圧と処理時間を秒単位で精密にコントロールし、手動で一番美しい瞬間を見極めて引き上げています。また、常に綺麗な状態を保つため、1週間に1回は処理タンクをすべて掃除し、水も薬品も新しく入れ替えて同じ品質をキープしているんです』


アルマイト加工の前に油分や不純物を徹底的に落とし、アルミを「まっさらな状態」へ整える様子

驚異の耐久性!約2000時間のトマト実験が証明する強さ

日興電化工業所で行われた過酷な実験データがあります。酸性の強いトマト料理を鍋に入れて煮込み、1週間ごとに新しいトマトに差し替えて観察する実験を繰り返したところ、なんと約2000時間(約12週間)経過しても、本蓚酸アルマイトの鍋肌は腐食や変色を見せなかったのです。

一般の染色アルマイトでは酸の影響で表面が柔らかくなり色落ちや溶出のリスクがありますが、本蓚酸アルマイトは硫酸アルマイトの約2倍の硬度を持ち、酸に強く傷がつきにくいことが実証されています。

職人の手により最適なタイミングで引き上げられる鍋たち

食品安全への理念!薬品を使わない「ニッケルフリーな蒸気圧力封孔」

日興電化工業所の最大の誇り、それは本蓚酸アルマイト加工・硫酸アルマイト加工のどちらにも共通して施される「ニッケルフリーな封孔処理」です。

アルマイト直後の表面にはミクロの穴が開いており、通常の工場では作業効率を上げるために「ニッケル塩」などの化学薬品を使って穴を閉じます。しかし、ニッケルは欧州等の食品安全基準で厳格に規制される対象であり、万が一皮膜が劣化した際に体内へ溶け出すリスクがあります。

日興電化工業所では、人体への安全性を最優先し、化学薬品やニッケルを一切使わない「高圧蒸気圧力による封孔処理」を採用しています。

『うちは純粋な水蒸気の圧力と熱だけで穴を閉じます。手間も時間もかかりますが、毎日お口に入る料理を作る道具だからこそ、絶対の安心安全を届けたい。創業以来、食品関係をメインに手掛けてきた私たちの譲れないプライドです』

薬品を使わず水蒸気の圧力のみで処理される安心・安全の技術

華やぐ金か、凜とした銀か。2つの鍋の気になる個性

今回の『槌目アルミ卓上鍋』は、暮らしのスタイルに合わせて選べる2種類の加工をご用意しています。どちらもニッケルフリーな高圧蒸気封孔処理が施されており、安全面での妥協はありません。

加工の種類 本蓚酸(ほんしゅうさん)アルマイト加工 硫酸(りゅうさん)アルマイト加工
カラー・表情 上品で落ち着いたシャンパンゴールド 清潔感あふれるシンプルなシルバー
質感・印象 ぬくもりがあり、和洋どちらの食卓にも映えるモダンな高級感 スタイリッシュでシンプル、素材本来の美しさが際立つデザイン
機能的強み 被膜が非常に強く(硬度約2倍)、耐食性・耐摩耗性に優れ傷つきにくい 軽やかで扱いやすく、現代の定番としてコストパフォーマンスにも優れる
こんな人におすすめ ・食卓に華やかさと上品さをプラスしたい方
・より長く美しさを保ちたいこだわり派の方
・すっきりとしたシンプルな暮らしを好む方
・定番の道具として気軽に毎日使いたい方
インテリアや好みに合わせて選べる2つの美しい表情

リアルな使い心地と手入れ方法:関西の文化が生んだ、毎日使いたくなる理由

職人たちの情熱と技術が詰まった『槌目アルミ卓上鍋』。日々の暮らしで末長く愛用していただくための、リアルな使い心地と正しいお手入れのコツをご紹介します。

火加減のコツは「中火以下」!省エネで長持ち

アルミは非常に熱伝導率が高いため、調理時の火力は「中火以下(鍋底から炎がはみ出さない程度)」で十分全体に熱が回ります。強火で煽る必要がなく、ガス代の節約(省エネ)にもつながり、鍋の変形を防いで長く美しく使えます。

一年中活躍!関西の「うどんすき」文化と夏の使い方

この鍋の浅型で広い形状は、実は関西発祥の「うどんすき」の道具から着想を得ています。

インタビュアーが「関西の年末といえば、何鍋が主流なんですか?」と尋ねると、谷口金属工業の代表はどこか懐かしそうに目を細めて教えてくれました。
『昔はそれこそ、このお鍋の発祥でもある「うどんすき」でしたね。この広くて浅いフチを滑らせるようにして、お出汁と一緒にうどんをすーっと器に寄せるんです』
「フチに這わせて取るから『うどんすき』の形なんですね!」と驚く取材陣に、代表は「そうそう、そういうお鍋なんですよ」と優しく微笑みます。関西の食文化への愛着と、使い手への深い思いやりが伝わる、職人の温かい人柄が垣間見えるひとコマでした。

さらに、大きな取っ手などの突起物がないため洗いやすく、鍋を囲む際にはどこから手を伸ばしても具材を取りやすいのが特徴です。夏場には冷やしそうめんや冷やしうどんの器として氷を浮かべてテーブルに出すのもおすすめで、一年中活躍します。


長く綺麗に使うためのお手入れのコツ

  1. 洗剤は中性洗剤を使用する
    アルカリ性洗剤や漂白剤、クレンザー、金属タワシは避けてください。柔らかいスポンジで優しく洗うのがコツです。
  2. 調理後はすぐに別の容器に移す
    強酸性や塩分の強い料理(トマト煮やキムチ鍋など)を何日も入れたまま放置せず、残った料理はタッパー等に移して洗うと被膜が傷みません。
  3. 洗った後はしっかり乾燥させる
    水気を拭き取り、風通しの良い場所でしっかり乾かすことで黒ずみを防げます。

おわりに:作り手の温度が伝わる鍋で、いつもの食卓をもっと豊かに

取材を通じて何より心に残ったのは、工場で働く職人さんたちの温かい笑顔と、「本当に安心で良いものを届けたい」という熱い想いでした。

『創業時のリボンのロゴに込めた、贈り物を届けるような想い』
『家族の口に入るものだからこそ、薬品を使わない封孔技術』

準備も後片付けも億劫だった冬の鍋料理が、この『槌目アルミ卓上鍋』があるだけで、軽やかに、そして少し誇らしい気持ちで愉しめるようになります。

使い捨てではなく、正しいお手入れをしながら自分だけの道具として育てていく楽しさを、ぜひあなたの食卓でも実感してみませんか?

Writer Profile

Haru

雪国出身。
美味しい料理で栄養を摂り、ヘアドネーションを目指して黒髪を育てています。
レパートリーは少ないですが料理自体は大好きなので、みなさんのお役に立てる情報を発信できるようにがんばります^^

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